「fadoul al zman saib」とは

「fadoul al zman saib」は、モロッコ出身の歌手・ミュージシャンであるFadoul(ファドゥール)が1970年代に発表したアルバムのタイトルです。アルバム名はアラビア語で「時代は厳しい」という意味があります。このアルバムは、Fadoulがアメリカやヨーロッパのロックやファンクに影響を受けて作った、独自のアラビック・ファンクの傑作として評価されています。

Fadoulの経歴と音楽性

Fadoulは1948年にモロッコのカサブランカに生まれました。彼は若い頃から音楽に興味を持ち、1960年代には自らバンドを結成して地元のクラブやレストランで演奏していました。彼は当時流行っていたアメリカやヨーロッパのロックやファンクのレコードを聴き、その音楽に魅了されました。特にジェームス・ブラウンやオーティス・レディングなどのソウル・シンガーに影響を受けたと言われています。

Fadoulは自らのバンドであるFadaul et les Privileges(ファダウル・エ・レ・プリビレージュ)と共に、アメリカやヨーロッパのロックやファンクの曲をアラビア語でカバーしたり、オリジナル曲を作ったりしました。彼はその強烈な歌声とエネルギッシュなパフォーマンスで、モロッコのジェームス・ブラウンと呼ばれるようになりました。彼は1970年代に3枚のシングルと1枚のアルバムを発表しましたが、当時は商業的な成功を収めることができませんでした。彼は1991年に亡くなりましたが、その死因や墓所は不明です。

Fadoulの音楽は、アメリカやヨーロッパのロックやファンクを消化しただけではなく、モロッコの伝統音楽や文化も取り入れたものでした。彼はアラビア語で歌い、モロッコの民族楽器や打楽器も使用しました。彼の音楽は、ロウで荒削りながらも魅力的なグルーヴとメロディーを持ち、時代や国境を超えて多くの人々に感動を与えることができました。

「fadoul al zman saib」の発掘と再評価

「fadoul al zman saib」は1971年に発表されたFadoulの唯一のアルバムです。このアルバムは8曲入りで、ジェームス・ブラウンの「Papa’s Got a Brand New Bag」やフリーの「All Right Now」などのカバー曲と、オリジナル曲が収録されています。このアルバムは当時はほとんど注目されず、数千枚しかプレスされなかったと言われています。そのため、このアルバムは長年にわたって忘れられたままでした。

しかし、2012年にドイツのレコード・レーベルであるJakarta RecordsのオーナーであるJannis Stürtz(ヤニス・シュテュルツ)が、カサブランカの小さな電気店で「Papa’s Got a Brand New Bag」のカバー曲を発見しました。彼はその曲に衝撃を受け、Fadoulの音楽を探し始めました。彼は2年間かけてFadoulの家族や友人、関係者に連絡を取り、彼の音楽を再発売する許可を得ました。彼はJakarta Recordsのサブ・レーベルであるHabibi Funk Records(ハビビ・ファンク・レコード)を立ち上げ、Fadoulの音楽を世界中に紹介しました。

2015年には「Papa’s Got a Brand New Bag」のカバー曲が7インチ・シングルとして再発売されました。2016年には「fadoul al zman saib」がLPとCDとデジタルで再発売されました。これらの再発売は大きな反響を呼び、Fadoulの音楽は多くのメディアやDJに取り上げられました。Fadoulは亡くなってから20年以上経った後に、世界的なアラビック・ファンクの先駆者として再評価されることになりました。

まとめ

「fadoul al zman saib」は、モロッコ出身の歌手・ミュージシャンであるFadoulが1970年代に発表したアルバムです。このアルバムは、アメリカやヨーロッパのロックやファンクに影響を受けた独自のアラビック・ファンクの傑作です。しかし、このアルバムは当時はほとんど注目されず、長年にわたって忘れられたままでした。2012年にドイツのレコード・レーベルがこのアルバムを発掘し、再発売しました。それ以来、Fadoulの音楽は世界中に広まり、彼は亡くなってから20年以上経った後に、世界的なアラビック・ファンクの先駆者として再評価されることになりました。